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夫婦の共依存関係

 

今回は、【夫婦】の共依存について、

 

さて、親子共依存でもお話しした通り、

共依存とは、二者の関係で両方が互いに依存し

合っている状態のことです。

 

親子共依存と夫婦共依存の構造は似ていますが、

 

〈親子共依存〉

 

上下関係、支配服従関係が分かりやすく、

主には親の過干渉過保護という形で現れる。

親子の縁は切り難く、脱却に難航する。

 

〈夫婦共依存〉

 

問題を起こす人とそれを世話する人という

構造が多い。

離婚により関係を切ることでは本質的な改善

にならず、また別の相手と同様の依存関係を

繰り返すことがある。

 

といった違いもあります。

 

夫婦の共依存関係のよくあるパターンには、

問題を起こす夫とその世話をする妻、

という構造があります。

 

“世話をする人”の側が

「あの人にとって私だけが甘えられる存在なんだ」

「あの人は私がいなかったら生きていけない」

「あの人は問題を起こすこともあるけど、

根は優しい人だから」

など相手からみた自分が特別な存在である

とみなすことで起こりがちです。

 

そして問題を起こすたびに処理をしたり、

かばったり、特別な良き理解者のような

“〜してあげる”言動をすることで、結局は、

“問題を起こす人”の問題がまた繰り返されます。

 

そして、“問題を起こす人”は、

「あの人は自分が問題を起こしても見捨てずにい

てくれている」

「あの人にはいつも世話になっているから感謝し

なければならない」

など“〜してもらっている”という感覚を無自覚に

募らせます。

 

親子の場合は、ある程度は

「親だから子のために〜してあげる」

「子だから親に〜してもらう」

という関係が成り立つこともあります。

 

一方で、夫婦においては、

「〜してあげる」「〜してもらう」という構造が

強すぎたり、してあげる⇄してもらう の方向が

固定化されたりすると、共依存関係に陥ってしま

います。

 

 

今回は夫婦共依存を例に、

回復に向けてどのようなカウンセリング過程を経る

のかお話しします。

 

※カウンセリング過程は多種多様です。

各々の背景によって適した方法は異なります。

以下はあくまでも一例としてご理解ください。

 

男性Cさんは、女性Dさんとの結婚を目前に、

ある性犯罪を犯してしまい逮捕・勾留されました。

Cさんの両親はDさんに別れを勧めましたが、

「Cさんには優しいところがたくさんあるんです。

一度の逮捕くらいで嫌いになんてなれません。」

と言い、Dさんは、Cさんの勾留中に婚姻届を出し

て結婚します。

 

Cさんの両親は、

「Dさん、いつもCのために本当にありがとう。

あなたは本当に優しい人ね。」

とDさんに頭が上がりません。

 

結婚生活が始まると・・・

妻は夫の再犯が不安で仕方なく、

夫の言動に常にビクビク。

「どこに行くの?何しに行くの?何時に帰るの?」

と確認せずにはいられず、

 

夫が少しでも不機嫌そうにしていると

「私の何かが気に入らないなら直すから言って」

など“夫の問題行動を止めるべく、甲斐甲斐しく

世話をする妻”になってしまいました。

 

夫の帰宅時に家にいなければならない、

と思うがあまり友人からの誘いを断ったり

仕事を変えたり趣味をやめたり、妻は自分自身

の生活を犠牲にし始めます。それでも、

夫の両親から「あなたのおかげよ」と言われる

たびに「私は彼のために人生を捧げよう」

「彼のためなら何でも頑張れる」と気持ちを引き

締め、再び、夫の顔色をうかがう日々です。

 

そんな妻と暮らすことに辟易としている夫は、

妻に対して上手に嘘をついて、また問題を起こし

ます。

 

 

上記の例は、まさに夫婦共依存関係にあります。

 

少し厳しい言い方になってしまいますが、

 

妻は、

“こんなにも困った夫が居ながらも甲斐甲斐しく

世話をする私”であり続けなければ存在意義を見失

ってしまうのです。

だから、無意識的に、夫が問題を起こし続けること

を望んでいて、そうなるような振る舞いを続けてし

まうのです。

 

夫は、

“自分では解決できないけど妻が処理するから別に

いいや”とでも言わんばかりに、

問題を自分のこととして捉えられず、

根本的な解決に取り組もうとしません。

こうして、互いの依存が強固なものになっていきま

す。

 

 

夫婦共依存についても、親子共依存と同様に

自ら共依存を主訴にカウンセリングに訪れることは

あまりありません。

なぜなら、お互いが悪循環になっていること自体に

無自覚で、むしろ悪循環の渦中にいることを望んで

いるからです。

 

きっかけとしては、

例えば犯罪やギャンブル、借金、アルコール、浮気

などの問題が明るみに出て、その問題解決のために

と周囲の勧めでカウンセリングにつながることが

ほとんどです。

 

そして、問題が繰り返されるメカニズムの一般論を

聞き、自分の言動が問題の根本的解決を遠のかせて

いるのではないかと気づくことから始まります。

 

 

特に“世話をしてあげていた人”にとって、

世話をしなくなることは強い恐怖が伴います。

相手を世話することで自分の価値を見出していた

のに、それがなくなると自分の存在意義が危ぶま

れるからです。

 

極端な表現ですが、

自分は幸せになるわけにいかない

周囲から同情されてこそ自分が保てる

という状態になっています。

 

“問題を起こしていた人”にとっては、

自分で自分の問題を処理した経験がないために、

世話人がいなくなってしまうと途端に困ります。

 

それでも、いつも世話を焼かれるのも面倒なも

ので、時に相手をぞんざいに扱うけれど離れて

いくこともないとタカをくくり、自分自身の

本質的な課題点に目を向けることはありません。

 

 

自分の言動の何が問題を維持しているのか

どう変化させる必要があるのか

なぜ自分は相手に依存しているのか

相手への依存をなくした時どうなることを

恐れているのかなど、

カウンセラーと一つ一つ見つめ、

相手と自分に境界線を引けるよう取り組んで

いきます。

 

“見つめる”“線を引く”なんて簡単に言えますが、

実際はじっくりと時間がかかるもので、

苦痛、恐怖、怒り、不安、自己否定の感覚など

も伴います。

 

だからこそ、カウンセラーがいます。

 

あなたには、依存する相手がいなくても

無条件に価値があり存在意義があることを

根気よく伝え続けることもカウンセラーの仕事

です。

 

これまた、簡単に言ってしまいましたが、

本当に本当に、根気のいるものです。

 

 

共依存は、親子・夫婦の関係に生じることが

多いものですが、対人援助職者と被援助者

(援助を受ける者)の関係においても、

似たような構造が見られる場合があります。

 

つまり、私 心理カウンセラーも該当するという

ことです。

 

“クライアントを助けてあげている”とか

“クライアント様にとって私はなくてはならない

存在だ”とか

どこか上からの目線で捉えることで満足感を

得ている場合、カウンセラー側が共依存関係の

発端となりかねません。

 

私はクライアントをこのような関係に巻き込

んでしまわないよう、自分と他者には適切に

線を引いています。

 

だからカウンセリングの初期段階では、

「冷たいなあ」と感じられる場面もあるかもしれ

ません。

そのような時も、率直にお話しいただいて大丈夫

です。

あなたの線引きの課題点に気づくきっかけになるか

もしれません。

 

今回と前回の【共依存】をお読みいただき、

なんだか自分のことのような気がする

もしかして私達は共依存に陥っているのでは

など少しでも感じられた方は、

銀のすずpremiumへご相談ください。

 

〈関連記事〉

親子の共依存について

夫婦カウンセリングを検討中の方へ その1

夫婦カウンセリングを検討中の方へ その2

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