「今この瞬間」に意識を向けると心が楽になる理由
札幌で心の不調に悩むあなたへ
未来や過去にとらわれて、
心が疲れていませんか?
私たち人間の脳は、基本的に「過去を振り返る」か「未来を予測する」ようにできています。
「昨日のあの発言、まずかったかな……」
「明日の会議、ちゃんと発表できるだろうか……」
そんなふうに、まだ起きていないことやすでに終わったことに意識が向き続けると、心は落ち着かなくなり、不安や緊張が高まっていきます。
実際、過去の失敗をくよくよ考え続けたり、未来を不安視して頭の中でシナリオを何度も繰り返す状態を、「反すう思考」「予期不安」と呼び、ストレスやうつ症状の引き金になることが知られています。
では、どうすれば心は穏やかさを取り戻せるのでしょうか?
その鍵となるのが、「今この瞬間」に意識を向けることです。
専門カウンセラーのご紹介
土井 裕(公認心理師)
札幌ストレス・カウンセリング銀のすず|札幌市在住
札幌市中央区でで科学的知見に基づく心理支援を行っています。
「今に意識を向ける」と自律神経が整い、心が落ち着く
・手のぬくもりや空気の温度に気づいている
・今、自分が何を感じているのかをぼんやりと観察している
こうした“今この瞬間”に気づく習慣は、私たちの心と体にとって、非常にポジティブな影響をもたらします。
神経科学の研究では、こうした意識状態になると、交感神経(ストレス状態を司る)が落ち着き、副交感神経(リラックス状態を司る)が優位になることが示されています。
これは、心拍が安定し、呼吸が深くなり、消化や免疫機能も整いやすくなるという意味です。
たとえば、短期間の呼吸瞑想でも、自律神経のバランスが改善し、ストレスに強くなる効果が報告されています(Tang et al. 2007)。
「今に戻る」トレーニングは、マインドフルネスだけじゃない
「今この瞬間に意識を向ける」と聞くと、瞑想やマインドフルネスを連想される方も多いでしょう。
それももちろん効果的ですが、日常生活の中で気軽にできる方法もたくさんあります。
フォーカシング(felt sense に気づく)
「胸がもやもやする」「胃のあたりが重い」など、体の中にある漠然とした感覚(フェルトセンス)に静かに注意を向けていく方法です。
このように体の“今の感覚”に耳を傾けることは、心の内面への気づきを深め、ストレスの軽減や自己理解につながるとされています(平野・池見, 2021)。
五感に注意を向ける
・食事の味や香りをしっかり感じる
・手で触れたものの感触を味わう
・歩くときに足裏の感覚に意識を向ける
このように五感を使って“今”を感じることも、立派な「今に戻る」練習になります。
【新提案】「1秒先を予測し、1秒前を振り返る」トレーニング

札幌のカウンセリングで私自身が用いている簡単で効果的な方法です。
▼ どうやるの?
2.「1秒前の自分は、どうなっていた? なにしてた?」と振り返ります。
3.そして、今この瞬間の呼吸を意識して、心を戻します。
▼ なぜ効果があるのか?
・未来を予測する行為は、脳の注意機能を「今」に引き戻します。実は未来を考えるときほど、脳は現在の状況を精密に分析しようとするためです。
・短い過去を振り返る行為は、自分の行動や感覚をメタ認知する訓練になります。
実際には1秒前後の予測や振り返りが出来ているわけではありません。
1秒後の予測をし続ける又はこの両方を1セットにすることで、意識がぶれにくくなり、結果として“今この瞬間”の臨場感が増していくのです。
日常生活の中で、1日数分から始めてみましょう。座っているとき、歩いているとき、仕事中、電車の中、などどこでも行えます。
実践の積み重ねが、
「安心できる心の土台」をつくる
「今この瞬間に意識を向ける」ことを習慣にすると、私たちの心の中に、“戻ってこられる場所”ができます。
・先延ばしにしがちな人が行動を起こしやすくなる(浜田・橋本, 2019)
・不安に飲み込まれても、立ち止まって呼吸を整えられる
・結果に振り回されず、「いま、できること」に集中できるようになる
これは、自己肯定感や自信にもつながっていきます。
「今」に戻ることは、誰でもできる心のリセット法
過去も未来も、私たちにとって大切な時間です。でも、それにとらわれすぎると、心は疲れ、体にも影響が出てしまいます。
「今この瞬間」に意識を向けること――それは、今のあなたのままで、できることです。
そして、たった1秒でも“今”に気づくことができれば、それは十分に心を整える一歩になります。
忙しい日常の中で、深呼吸とともに。
「1秒先を予測する、1秒前を振り返る」ことから、
ぜひ始めてみてください。
参考文献
- Tang, Y.-Y. et al. (2007). Short-term meditation training improves attention and self-regulation. PNAS
- 浜田健太郎・橋本久美(2019)『今ここに意識を向ける瞑想法による先延ばし傾向低減効果の検討』北海道心理学研究
- 平野智子・池見陽(2021)『フォーカシングと〈からだ〉』心身医学