トラウマ体験からの解放―フラッシュバックを抑えるための効果的なテクニック
「トラウマ」って言葉、よく耳にしますが、実はギリシャ語の「τραῦμα(trauma)」が由来です。元々は「傷」や「損傷」を意味していて、最初は身体的な傷を指していました。
でも、時代が進むにつれて、心の傷や精神的なダメージを表す言葉として広く使われるようになったそうです。
「トラウマ」を心理学では、トラウマは過去の痛ましい体験が心や体に深い影響を与え、それが長期間にわたって続く状態を指します。
トラウマの特徴は、その体験が過去に留まらず、フラッシュバックや悪夢などで現在の生活に影響を与えることです。
特にフラッシュバックは、過去のトラウマ体験が急に鮮明に蘇り、まるで今起こっているかのように感じる現象なんです。
フラッシュバックのメカニズム:脳の「非常警報」
では、フラッシュバックが起こる仕組みってどうなっているのでしょうか?これには脳の「扁桃体」っていう部分が大きく関わっています。
扁桃体は、危険を感じたときに「非常警報」を発動して、体を守ろうとする役割があるんです。
過去に受けたトラウマが原因で、この非常警報が過敏になってしまうと、まるでその時の恐怖がまた現実に起こっているかのように感じてしまうのですね。
そしてもう一つ重要なのが「海馬」という部分。ここは本来、記憶を整理して「これはもう過去の出来事だよ」って処理する場所。
でも、トラウマによるフラッシュバックが起きると、海馬がうまく働かず、過去と現在の区別ができなくなっちゃうのです。
その結果、まるでタイムスリップしたかのような感覚に襲われるわけです。
では、どうやってこの「非常警報」を抑えることができるのでしょうか?
次に、フラッシュバックをコントロールするための具体的な技法を見ていきましょう。
フラッシュバックするくらいであれば、専門家(公認心理師や臨床心理士)に相談するのが望ましいですが、ここでは日常生活に取り入れられるシンプルな方法を幾つかご紹介します。
フラッシュバックをコントロールするための技法
1.グラウンディングテクニック
グラウンディングとは、意識を「今ここ」に戻す技法です。フラッシュバックが始まると、過去の出来事に引き込まれてしまうため、現在の安全な状態を確認することが大切です。具体的な方法としては、
(1)5-4-3-2-1法**
見えるもの5つ、触れられるもの4つ、聞こえる音3つ、匂い2つ、味1つを順番に意識します。これにより、現在の環境に集中でき、フラッシュバックから離れることができます。
(2)冷水を使った再調整
冷たい水で手や顔を洗ったり、冷たい飲み物を飲んだりすることで、自律神経を刺激し、心身のバランスを取り戻します。
2.マインドフルネス呼吸法
マインドフルネスは、心を「今ここ」に保つための有効な方法です。特に呼吸に集中することで、フラッシュバックの影響を和らげることができます。いろいろな呼吸法があります。
例えば 4-7-8呼吸法
4秒かけて息を吸い、7秒間止め、8秒かけてゆっくり吐きます。副交感神経を活性化させ、体をリラックスさせる効果があります。フラッシュバックが起こりそうな時や、既に始まった時に効果的です。
3.感情ラベリング
感情ラベリングは、強い感情を客観視するための技法です。自分が感じている感情を言葉にすることで、感情に飲み込まれるのを防ぎます。
例えば、「今、私は不安を感じている」「今、恐怖を感じている」と言葉にすることで、その感情を冷静に見つめ直すことができます。
4.イメージリフレーミング
フラッシュバックの記憶が強烈な場合、イメージリフレーミングが役立ちます。これは、トラウマの記憶を別の視点から再構築する方法です。
たとえば、その場面を白黒に変換したり、フィルターをかけたように想像することで、感情的な負担を軽減できます。できれば専門家と行った方がスムーズに改善が進む技法です。
最後は専門家と一緒に行う技法で、PTSDやトラウマ処理には最も効果的な方法とも言えます。
5.EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
EMDRは、目を動かしながらトラウマ体験に関連する記憶を再処理する専門的な治療法です。
これにより、フラッシュバックや過剰な感情反応を軽減できます。
セラピストの指導のもとで行うこの技法は、トラウマ治療において非常に効果的です。銀のすずでもよく使用する技法のひとつです。
フラッシュバックを乗り越えるために
フラッシュバックは、非常に辛い体験ですが、適切な技法を使えばコントロールすることが可能です。
自分が安全な場所にいることを認識し、心と体を落ち着かせる練習をすることが大切です。
また、信頼できる専門家のサポートを受けながら、長期的な回復を目指しましょう。
フラッシュバックは過去の出来事が現在に影響を与えるものですが、それに支配され続ける必要はありません。
この記事で紹介した技法を実践し、少しずつ心の自由を取り戻していきましょう。
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