人間関係に大切な両価性
今回のテーマは、
“両価性(りょうかせい)” です。
英語ではアンビバレンス(ambivalence)
といいます。
日本語であれ英語であれ、分かるようで
分からないこの言葉・・・
心理学の世界で用いる際にも、
語り始めると日が暮れて夜が明けて、
何日もかかることでしょう。
そこで今回は、心理学の中でも臨床心理、
かつ、カウンセリング場面やあなたの日常
にもある身近な “両価性” をお話しします。
※「かなり興味がある!本格的に知りたい!」
という方は、精神分析に関する分厚い書物を
読んでみられると良いかもしれません。
両価性とは、この漢字の通り、
“両方の価値がある”ことを意味します。
相反する2つの価値が存在する、
ということです。
人は誰しも、両価性を抱くことがあります。
両価性は、あって当然のものですが、
そのせいで悩みが生まれる場合もあります。
あなたも、
「〇〇だけど△△」
「〇〇なのに△△」
という感覚になったことはありませんか?
例えば、
「ダイエット中なのに、食べたい!」
「一人ぼっちで孤独だけど、人と関わるのも怖い」
「お母さんは優しいけど、怖いところもある」
「大好きだけど、大嫌い」・・・などなど。
両価性に対して、
【受入れられないとき】
【激しく揺れ動くとき】
人は苦悩します。
両価性が受入れられず人間関係で苦悩する
Aさんの例をみてみましょう。
Aさん
子どもの頃からずっとお母さんのことが大好き
で、いつも何でもお母さんに相談しています。
学校でずっと仲良しだった子から、気まぐれに
無視されて困った時にも、
「あなたは悪くないわ。そういう子と無理をして
仲良くしようとしなくてもいいんじゃないかしら」
と答えてくれる。いつでもAさんの味方をしてくれ
る優しいお母さんです。
そんなある日のこと、
Aさんが帰宅するとママ友との会話が聞こえてきま
した。お母さんは声をひそめて
「うちのAったら、友達から避けられているみた
い。きっとあの子にも嫌われる理由があると思う
のよ。恥ずかしいわ。」と言っているではありま
せんか・・。
このお母さんのセリフに、
Aさんは衝撃を受けました。
Aさんの知っている“優しいお母さん”ではなく、
まるで、“我が子を呪う悪魔”のように思えたのです。
次第にAさんは、親からも他人からも忌み嫌われる
存在ではないかと、思うようになり、人間関係のつ
まづきからカウンセリングに訪れました。
Aさんの不調は、
友達や母親に対する両価性を受入れられなかった
ためだと考えられます。
Aさんは、“お母さん=娘思いの優しい存在”
という一面しか見てこなかったのです。
だから友達や母親からのネガティブな言動をとて
も信じられず、受入ることができなかったのです。
良い面もあれば、そうでない面もある。
どちらかが嘘なのではなく、どちらも本当で、
その両方があるのが普通なのだ。
・・・ということに、いつの日か気づき受入れるこ
とができたら、Aさんは母親とほどよい距離を保ち、
自立していくことも叶うでしょう。
ある一面しか捉えていなかったために、
それに相反する自分の感情に気づいた時、
激しく揺れたことが分かります。
どちらかを否定しようとすればするほど、
否定した感情がむくむくと溢れ出てきたり、
気持ちの整理がつかずどんどん混乱したり。
特に、母親に対し子供は、
本能や道徳的に愛情を求めます。
愛情が十分にもらえない母親には
憎しみが生まれます。
母親に対して抱くネガティブな思いも、
それに相反するポジティブな思いも、
両方あって良いのです。
どちらか一方だけを重視していると、
もう一方が現れたときに激しく揺れるものですが、
どちらも否定せず、両方の気持ちを大事にして良
いのです。
このような例からも分かるように、
両価性は愛憎感情と言われることもあります。
あなたは、誰か/何かに対して、
ある一面だけを過度に捉えていませんか。
過度に期待したり、過度に卑下したり、
ある一面のみに集中することはバランスが良く
ありません。
そして、
それに相反する面に気づいた時、
怖い・不安・悲しい・そんなはずはない
など心が拒絶反応を示しませんでしたか。
“いいところもあれば、そうでないところもある”
“すごく嫌いなところもあるけど、すごく好きなと
ころもある”
両価性があるのは、あたり前のことです。
それでも受け入れがたいこともあるでしょう。
銀のすずpremiumは、
揺れ動く心を持ったあなたが、
その揺らぎを楽しめるようになるまで
ゆっくりお供します。
あなたも“両価性を受け入れる旅”を始めて
みませんか。
(関連記事)